無理していませんか
写真はヒメイワダレソウです。
用水路の法面に防草シートを張り
切れ目を入れて、植栽しました。
七月には花が一斉に咲き、美しいです。
美しいけど
好ましくありません。
私にとっては。
香川県にいたとき、まだ樹木医ではない時に行いました。
後半は工事のリーダーでやってました。
公共の事業ですので規格通りに行いました。
この法面は毎年草刈がされていたそうです。
でも、草刈は大変なので
省力化の目的で、防草シートを張りたい。
でも、景観として良くないので、植物で覆いたい。
そんなわがままの果てに
防草シート+グランドカバープランツ
防草シートは10年間もつ素材なんだそう。
リュウノヒゲや、テイカカズラも試験的に植栽しました。
問題は
・既存の生態系を駆逐してしまった
・ヒメイワダレソウは外来種なので、在来種へ影響を与える可能性が大きい
・防草シートの下には他の植物の根がなくなり、土砂が流出しやすくなる
・今後、草抜きなどの管理がいる
・シートの耐久性。ボロボロになった時にどうするのか…今後の維持管理のこと
などがあります。
私は、この工事は沢山問題があるので
望ましい方法ではなかったのではないかと考えています。
毎年草刈を続けることが一番良かったんじゃないかと考えています。
今回の工事の金額+今後の草抜き等の維持費
さらに10年後ボロボロになったシートの撤去など考えると…
草刈の労働力を確保するほうが現実的だと思います。
公共の事業ですから、草刈は地域の皆さんのお力も借りれるかもしれませんし。
さてここから
生態学的な視点を加えていきます。
大面積に同じ植物(品種も一緒)が繁茂しているなんて、異常なことなんです。
(非常に過酷な状況で、その植物しか適応できない状況でも単一化が起こりえますが)
何かのはたらきかけ(人為や、河川の氾濫や噴火や台風など突発的災害)がないと、
日本の自然状態ではモザイク状に生物が多様化します。
それを、止めているんです。
人の力で。
自然の遷移を止めるわけですから
莫大な労力が要ります。
しかもこのケースでは、わざわざ植栽して
よそからもってきた植物のみを生やそうという試み。
そりゃ、大変ですよ。
そして法面なのに根系の緊縛力にも期待できない。
やはり、他の方法を探したほうが良いと思います。
今の自分なら大いに提言します。
単一のものがたくさんあるという状況がそんなに尊いものなのでしょうか。
ステレオタイプの「ガーデニング」なデザインばかりに魅力を感じるのはなぜか。
人と自然の健やかな関係を築くことをモットーにしている私は
もっともっと問いかけていきたい
無理していませんか。
長い目で見て、無理なく。
あなたと自然環境がともに健やかであることが
一番望ましい。